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キングアブドゥルアジーズ競馬場は、サウジアラビアにある2つの競馬場のうちのひとつで、首都リヤドの郊外、キングハーリド国際空港の約8キロメートル東にある、アル・ジャナドリア地区に、2003年にオープンした。敷地面積は約9平方キロメートルで、競馬場の他に、屋外プールなどを備えたクラブハウス、広大なイベントスペースなどを備える。2023年にはゴールを過ぎた内側に王族専用の観覧スタンドが建設され、サウジカップの表彰はここでされるようになった。サウジアラビアにおける重賞、リステッド競走の大半と、すべての国際競走がここで開催されている。
コースデザインはアメリカ型の左回り、平坦のオーバルコースで、開設当初から2019年まではダートコースのみだったが、2019年に内回りコースに芝が敷かれて芝コースが設定された。
ダートコースは1周2,000メートルで2コーナーから引き込む形で450メートルのシュートコースが設定されており、幅員は25メートル、ホームストレッチの直線距離は約500メートルとなっている。4コーナーからのシュートコースもあるが、こちらは現在レースでは使用されていない。1,200メートルから2,400メートルまで、200メートル間隔の距離が設定されている。
芝コースは1周およそ1,800メートルで、ホームストレッチの直線距離は438メートル、幅員は21メートルとなっている。2019年に敷設された当初は、隣国バーレーンで生育させた芝を移植させていたが、現在は競馬場の敷地内で育成させたものも使用している。冬から春にかけては雨も降ることがあるものの、1年を通して日差しが強く、メンテナンスにはかなり配慮がされている。距離は1,200メートル、1,351メートル、2,100メートル、3,000メートルが設定。1,351という数字は、向正面をいっぱいに使った場合の距離の上限であり、ヒジュラ暦でのサウジアラビアの建国年にも由来するものである。
国際招待競走ではいずれのコースもフルゲートは14頭。平時の開催ではその限りではない。
ハイライトとなるのは、2020年に創設された2月の最終金曜・土曜に行われるサウジカップ開催だ。初日は4レースで覇を競う国際騎手招待競走「インターナショナルジョッキーズチャレンジ」と、純血アラブによる4歳以上の芝G1競走アルムニーフカップ、2日目はサウジカップを中心にサラブレッドの重賞6つと、純血アラブのダートG1オバイヤアラビアンクラシック、そしてパートⅡ国以下の調教馬によるサウジインターナショナルハンデキャップが組まれている。メインのサウジカップは賞金総額2000万アメリカドルで、目下の世界最高額賞金レースとなっており、レッドシーターフハンデキャップは同250万アメリカドル、その他のサラブレッドの重賞も同150万から200万アメリカドルで、いずれも出馬登録料は不要、完全招待のため、海外の馬主は負担なしで出走することができる。
2024-2025年シーズンより、二聖モスクの守護者杯(1月、ダート1,800メートル)が国際G3に、クラウンプリンスカップ(12月、ダート2,400メートル)とプリンスカリッドアブドゥラカップ(1月、芝2,100メートル)が国際リステッドに昇格し、いずれもこの競馬場で実施されている。
空港からは車で15分程度と至近であるが、2024年2月時点では交通インフラは一切なく、個人旅行でアクセスするためには、タクシーや各種ライドシェア、チャーター車の利用は必須となる。
場内の建物は、メインスタンド以外、2020年以降はほぼ毎年建て替えや、新規建築が行われており、また、競馬当日に使用される敷地も、年々拡張している。
厳格なイスラム教に則っており、場内では馬券の発売はなく、またアルコール類の提供も一切行われていない。サウジカップ開催当日はフルコースを提供するレストランも仮設で作られるなど、手厚いホスピタリティが用意されている。
文:土屋 真光
(2025年2月現在)
サウジカップが行われるダート1,800メートルは、サウジアラビアの国際競走におけるチャンピオンディスタンスで、前哨戦である二聖モスクの守護者杯(国際G3)などでも同じ距離が使用される。
キングアブドゥルアジーズ競馬場の外周で、2コーナーの出口で合流するシュートを、300メートルほど入ったところからの発走。コースの幅員は25メートルでフルゲートは14頭。スタートしてから第3コーナーまでの約800メートルをひたすら真っすぐ走る。そのため、序盤から展開が落ち着くのは珍しく、しばらくはコーナーもないため、外枠の馬は終始外を回されることになりやすい。しかし、サウジカップは外枠が不利かというと決してそうではなく、2021年にはミシュリフが12番枠から快勝。2023年は10番枠、13番枠の馬が、それぞれ2着、3着となり、2024年もウシュバテソーロが11番枠から僅差の2着となった。
創設の2020年以来の勝ち馬を調教国別で見ると、アメリカ2勝(2020年は1着馬が後日失格となり2着馬が繰り上がり)、イギリス1勝、サウジアラビア1勝、日本1勝という内訳。イギリスと日本からの勝ち馬は、いずれも芝でG1を勝っていたという点が共通していたが、それ以外の3頭は芝の出走歴もなかった。
また、脚質面でも、それぞれ異なる。ダートに使用されている素材は、土由来のダートに粉砕した松のチップを混ぜたもので、アメリカやドバイよりもコースのキックバックは少ない。そのため、必ずしもアメリカのような先行にこだわる必要はなく、むしろ逃げ切りは2020年からの5回中、2023年のパンサラッサの1回のみとなっている。
文:土屋 真光
(2025年2月現在)