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シャティン競馬場(沙田馬場)は、香港にある2つの競馬場のうちのひとつで、九龍半島新界エリアの沙田(シャティン)区にある。もともと入り組んでいた沿岸の一部を埋め立てた土地に建設された。1978年開場と、130年を超える香港ジョッキークラブの歴史から考えるとまだ日は浅いが、2つの観覧スタンドを備え、競馬場全体で10万人まで収容が可能。馬場内はペンフォード公園として一般市民に開放されている。ジャニュアリーC(G3。ハッピーバレー競馬場で開催)を除く、香港における全ての重賞や限定リステッド競走である4歳三冠シリーズ(香港クラシックマイル、香港クラシックC、香港ダービー)が行われるコース。また、2008年に開催された北京オリンピックの馬術競技が、隣接する特設会場で行われ、その後、厩舎は国際検疫厩舎として、競技場は国際厩舎の準備運動の角馬場として転用されている。
非営利団体として、ロイヤル香港ジョッキークラブ(当時)は病院や学校、その他の社会インフラへの貢献に重きを置いていたが、これらの原資は全て競馬興行とその馬券発売によるもので、これらをより拡充させるために、新たな競馬場を建設することが急務とされた。そこで、1972年にジョッキークラブは政府にこの計画を提出すると、ほどなくして承認を受け、その計画は即座に実行へと移された。
コースのデザインにおいては、世界中の競馬主催者の研究や意見を参考にし、これらの経験を共有することで行われた。開設後、幾度かのマイナーチェンジを経て、現在のコースは楕円型の右回りで、1周1899メートル、直線距離430メートル、幅員30.5メートル(Aコース使用時。仮柵使用で最小18.3メートル)の芝コースと、1周1555メートル、直線距離365メートル、幅員22.8メートルのオールウェザーコースとなっている。芝コースには2コーナーと4コーナーの各出口に合流するシュート走路がある。2コーナー入り口から3コーナーにかけて緩やかな上り坂、3コーナー過ぎからゴールにかけて緩やかな下り坂となっているほか、走路の断面はアーチ状で、3コーナーから4コーナーはコースの外側がややせり上がったバンク状になっている。芝コースで使用されている芝種はバミューダグラスが主なもの。スタート地点は8か所が設定されており、1000メートルから2400メートルの距離で開催されている。
多雨多湿な気候の香港で、毎年9月から7月の約10か月間、週1日ペースで開催されるため、芝の保全にはかなりの力を入れている。水はけの良さと適度な保水性は世界屈指のもの。パドックは開閉式の屋根が据え付けられており、ここでも天候への配慮がなされている。
競馬場建設と同時に交通インフラも整備され、MTR東鉄線支線の「馬場(Racecourse)」駅が直結されており、これを利用すれば、九龍半島の繁華街中心部からも30分程度で着く。このほか、開催当日は香港の各地から臨時バスが運行(COVID-19対応中は運行を制限)。香港国際空港からも車で40分程度と非常にアクセスがいい。
シャティン競馬場が最もにぎわうのは、シーズンの初日と最終日、香港ダービー、そして旧正月の開催で、それぞれの開催日は文字通り立すいの余地もない(COVID-19対応中は入場を制限対応)。
2022年11月現在、1200頭前後の香港調教馬のうち、約75%がシャティン競馬場にある厩舎に在厩。ほとんどの騎手や調教師も敷地内および周辺に居住しており、また、敷地内には馬に関する研究所と香港騎術アカデミーなどがあり、香港競馬に関するものの大半がここに集約されている。
新型コロナ感染症禍で馬主を含めた観客の一切の入場を制限していた期間中に、スタンドのリノベーションを実施。特に検量室付近は屋根を設けるなど、大きく様変わりした。
注記:重賞の格付け・日程等は、2022-2023年シーズンに準じた
文:土屋 真光
(2022年12月現在)
芝1200メートルは、向正面の中ほどからスタート。香港スプリントが行われる他、G1競走では1月のセンテナリースプリントCと4月のチェアマンズスプリントプライズが行われる。
香港スプリントやチェアマンズスプリントプライズで使用されるAコースは仮柵を使用せず、幅員は30.5メートルで、フルゲートは14頭となっている。スタート地点の外側は、運河とそれに並行するジョギングおよびサイクリングコースとなっている。競馬場はそれよりも一段高い位置にあるものの、外の風景は丸見えで、集中力を欠く馬は輪乗りの段階で注意が必要となってくる。
最初のコーナーである3コーナーまでの距離が約300メートルと短いため、序盤の攻防が非常に激しくなりやすい。また、馬格のない馬はここでもまれるので、小型馬はやや分が悪い。3コーナーに向かっては緩やかながらも上り坂で、先行馬はスピードに加えて、この坂に負けないパワーも必要になってくる。3コーナーに入ると徐々に外側がせり上がったバンク状のコースとなっており、そのため、スピードが緩むことなくコーナーを通過できる。4コーナーでは再びフラットになり、シュートコースと合流して直線へと向かう。最後の直線はゴールに向かって緩やかな下り坂で、またコース全体の断面が丸みを帯びたカマボコ状となっているため、外から伸びる馬は内に切れ込みながら加速をつけることが多い。4コーナーからゴールまでの最後の直線は430メートル。
芝1200メートルAコースにおいて、2020-2021年シーズンから2022年11月27日までの統計で、最も勝率が高いゲート番は80戦13勝の「1番」で16.3%となっている。続いて77戦12勝で勝率15.6%の「8番」、そして79戦9勝で勝率11.4%の「6番」、76戦8勝で勝率10.5%の「10番」で、勝率が10%を超えるのはこの4つ。最も低いのは78戦1勝で勝率1.3%の「9番」で、これは以前から強い傾向として続いている。このほか、60戦2勝で勝率3.3%の「13番」と80戦3勝で勝率3.8%の「3番」が勝率5%を切る。連対率では「8番」が27.3%と最も高く、22.5%の「1番」とともに20%を超える。このほか、「6番」、「7番」、「10番」が19%前後を記録している。3着内率では「1番」が35.0%とトップで、31.2%の「8番」と30.4%の「7番」が30%超を記録している。
2006年に香港スプリントが現在の条件となって以来、香港12勝、日本3勝、南アフリカ1勝。芝1200メートルのレコードタイムは、2007年11月のインターナショナルスプリントトライアル(現:香港ジョッキークラブスプリント)でセイクリッドキングダムがマークした1分07秒50。香港スプリントで1分07秒台を計時したのは2006年のアブソリュートチャンピオン(1分07秒80)のみ。ただし、ここ数年で1分07秒台が頻発しており、11月20日のジョッキークラブスプリントではB+2コースで同じくラッキースワイニーズが1分07秒55で勝利し、6着のウェリントンまでが1分07秒台で走破しているように、全体的な高速化が進んでいる。
注記:重賞の格付け・日程等は、2022-2023年シーズンに準じた
文:土屋 真光
(2022年12月現在)
香港マイルの行われる芝1600メートルは、2コーナーへと合流する引き込みコース上からスタート。この舞台では、1月の香港スチュワーズCと香港クラシックマイル、4月のチャンピオンズマイル、12月の香港マイルの4つのG1級競走(香港クラシックマイルは香港馬限定のため格付け外)が行われる。
香港マイルやチャンピオンズマイルなどで使用されるAコースは仮柵を使用せず、幅員は30.5メートルで、フルゲートは14頭となっている。スタンドから離れている分、スタンドの騒がしさが届きにくく、いれ込みやすい馬も落ち着かせやすい。
序盤は、3コーナーに向かって上り坂の向正面を目いっぱいに使うため、縦の隊列は早く決まりやすく、それほど流れが速くはなりにくいが、緩い流れの中で細かい動きも多い。ラップで見ると、重賞クラスでは、最初の400メートルが24秒台中盤で、3コーナーからバンク状のコーナーを抜けて4コーナーへ入る次の400メートル-400メートルがそれぞれ23秒台前半、ゴールに向かって緩やかな下り坂となる最後の400メートルが22秒台中盤となっている。コース全体の断面が丸みを帯びたカマボコ状となっているため、外から伸びる馬は内に切れ込みながら加速をつけることが多い。
芝1600メートルAコースにおける2020-2021年シーズンから2022年11月27日までの統計で、最も勝率が高いゲート番は34戦6勝の「2番」で17.6%。続いて34戦5勝で勝率14.7%の「5番」、34戦4勝で勝率11.8%の「3番」、同10.0%の「10番」までが勝率10%以上となっている。最も低いのは34戦0勝の「1番」と28戦0勝の「11番」で、隣同士の枠で極端に異なる結果となっている。連対率では「5番」が35.3%で突出。次点は25.0%の「13番」、次いで23.5%の「2番」、20.6%の「3番」、20.0%の「10番」となっている。ワーストは「14番」で5.3%、勝率最低の「1番」も5.9%。3着内率でも「5番」が50.0%でトップ、次いで32.4%の「3番」が2位で、ここまでが30%以上。ワーストは「12番」の8.7%で、唯一10%を下回っている。
香港マイルが国際G1に昇格した2000年以降の22回で、香港調教馬16勝、日本4勝、UAEとニュージーランドが各1勝(イギリスとUAEに拠点のあるS.ビン・スルール調教師の管理馬は、UAE調教扱いとした)。2015年にモーリスが勝利するまでは、香港馬が9連勝。レコードタイムは、2021年7月にプレシャスシップが1分32秒24を叩きだし、ビューティージェネレーションが持っていたレコードをコンマ4秒更新。1分32秒台は珍しくなくなっているが、香港マイルでは1分33秒から34秒台の決着が多く、昨年のゴールデンシックスティの勝ちタイムも1分33秒86だった。
注記:重賞の格付け・日程等は、2022-2023年シーズンに準じた
文:土屋 真光
(2022年12月現在)
香港カップが行われる芝2000メートルはスタンド前の発走。香港カップのほか、2月の香港ゴールドC、3月の香港ダービー、そして4月のクイーンエリザベスⅡ世Cの計4つのG1級(香港ダービーは香港馬限定のため格付け外)競走が行われる。
香港カップで使用されるAコースは仮柵を使用せず、最も幅員のある30.5メートルで、フルゲートは14頭となっている。スタート地点がスタンドの目の前のため、スタンドの騒がしさの影響を受けやすく、いれ込む馬は注意が必要。スタートしてから最初の1コーナーまでが短く、序盤は内めの位置取り争いが厳しい一方で、位置を取りに行く過程で折り合いを欠く馬も少なくない。特に内枠の先行馬は、前に入られることを避けるために、スタートしてすぐに馬に勢いをつけすぎてしまうこともある。
ラップで見ると、重賞クラスでは、最初の400メートルが26秒前後で、2コーナーから向正面中ほどまでの400メートル、そこから3コーナー手前までの400メートルがそれぞれ24秒台前半、そして、ここから400メートルごとに1秒程度加速していくので、後半の800メートルは芝1600メートルとほぼ同ラップになる。コース全体の断面が丸みを帯びたカマボコ状となっているため、外から伸びる馬は内に切れ込みながら加速をつけることが多い。
芝2000メートルAコースにおける2020-2021年シーズンから2022年11月27日までの統計で、最も勝率が高いゲート番はいずれも18戦3勝で16.7%の「2番」「4番」「5番」で、次いで16戦2勝で12.5%の「8番」、18戦2勝で11.1%の「3番」「6番」までが10%以上となっている。一方で、0勝は「7番」「10番」「11番」「13番」「14番」と5つにも及ぶ。とりわけ「11番」と「14番」は連対率も0%となっている。また、「1番」も18戦1勝の5.6%と苦戦している。連対率が最も高いのは31.3%の「8番」で、勝率1位だった「2番」「4番」「5番」が27.8%でこれに続く。ところが3着内率では36.4%で「12番」がトップとなり、「2番」「5番」そして勝率0%だった「7番」が33.3%で2位タイとなっている。
香港カップが国際G1に昇格した1999年以降、香港調教馬が8勝、日本が6勝、イギリスとフランスが各3勝、UAEとアイルランドと南アフリカが各1勝(イギリスとUAEに拠点のあるS.ビン・スルール調教師の管理馬は、UAE調教馬扱いとした)。コースレコードは1999年にジムアンドトニックがクイーンエリザベスⅡ世Cで記録した2分00秒10が長く破られていなかったが、2017-2018年シーズンに初の2分切りが達成されると、その後相次いで更新され、現在は2019年4月28日のクイーンエリザベスⅡ世Cで記録されたウインブライトの1分58秒81。香港調教馬だけのレースとしては、今年の11月20日に行われた香港ジョッキークラブカップでロマンティックウォリアーが記録した1分59秒23がレコード。 香港カップの勝ち時計は概ね2分00秒から01秒台の決着になりやすく、ラヴズオンリーユーが勝った昨年も2分00秒66だった。
注記:重賞の格付け・日程等は、2022-2023年シーズンに準じた
文:土屋 真光
(2022年12月現在)
香港ヴァーズが行われる芝2400メートルは、4コーナーへと合流する引き込みコース上からスタート。現在の香港における最長距離で、レース数も少なく、重賞は香港ヴァーズ、5月のチャンピオンズ&チャターC(G1)、その前哨戦であるクイーンマザーメモリアルC(G3)の3レースが行われるのみだ。
香港ヴァーズで使用されるAコースは仮柵を使用せず、最も幅員のある30.5メートルで、フルゲートは14頭となっている。スタートから最初のコーナーまで約500メートルあり、序盤からスローになりやすい。
ラップで見ると、序盤から1600メートルまでは400メートルあたり24秒から25秒台で流れることが多い。ここで動く馬もいるものの、全体のラップが速くなることは少ない。しかし、3コーナーに入る残り800メートルから23秒台中盤と急激にペースが上がり、最後の400メートルは23秒台前半となる。後半の800メートルは、芝1600メートルや芝2000メートルとほぼ同ラップと考えていいだろう。前半がスローペースで流れて、後半1200メートルがスプリント戦並のタイムになることもあり、この急激なラップの変化への対応力が必要で、近年はメルボルンC上位馬の好走もあることから、息の長い末脚とスタミナが要求されるコースとなっている。
芝2400メートルは2016-2017年シーズンから2022年11月27日までに、Bコース(幅員26メートル。Aコースは30.5メートル)を含めても前述の重賞18(3×6シーズン)レースしか行われてなく、フルゲートのレースも3度だけ。そのためサンプル数が少ないが、その中で最も勝率が高いのは15戦4勝で26.7%の「7番」、これに18戦4勝の「4番」と9戦2勝の「9番」が22.2%で続く。「3番」「6番」「11番」「12番」「13番」「14番」は0勝。連対率では、「1番」が44.4%でトップ。続いて33.3%の「7番」と「9番」、28.6%の「10番」、27.8%の「5番」と続く。3着内率は54.5%で「8番」がトップ、次いで53.3%の「7番」、「1番」と勝率では5.6%だった「5番」が50.0%と好成績を残している。
香港ヴァーズが国際G1となった2000年以降、フランス調教馬が7勝、イギリスが5勝、日本が4勝、アイルランドが3勝、香港が2勝、UAEが1勝(イギリスとUAEに拠点のあるS.ビン・スルール調教師の管理馬は、UAE調教馬扱いとした)。また、牝馬が出走した際は好走が多く、2018年の2着がリスグラシュー、2019年も2着がラッキーライラックで、昨年もエべイラが3着だった。コースレコードはヴィヴァパタカが2007年6月のチャンピオンズ&チャターCで記録した2分24秒60で、2019年の香港ヴァーズではこれに次ぐ2分24秒77が記録された。
注記:重賞の格付け・日程等は、2022-2023年シーズンに準じた
文:土屋 真光
(2022年12月現在)