馬場のクッション性を数値で表したものです。
競走馬が走行時に馬場に着地した際の反発力を数値化したもので、この数値が高いと馬場の反発力が高いといえます。
クッション値の測定には、ゴルフ場やサッカー場、ラグビー場などでも使用されている簡易型硬度測定器のクレッグハンマー(正式名称はクレッグインパクトソイルテスター)を使用します。
2.25キログラムの重りを45センチメートルの高さから自由落下させて馬場に衝突した際の衝撃加速度を測定します。
1箇所につき4回連続で重りを落下させ、その4回目の数値をその箇所の測定値とします。なお、この測定方法はクレッグハンマーを使用する際の一般的な方法です。
コースの内柵から2メートルと3メートルの間の場所をその地点の測定範囲とし、1地点につき5箇所測定を行い、その平均値をその地点のクッション値とします。
測定地点はゴール前と4コーナーおよびその間の各ハロン地点で、各地点の平均値をクッション値として公表します。
クッション値は馬場表層の含水率と密接な関係があり、含水率が高くなるほどクッション値は低くなる傾向があります。
クッション値と同様に馬場の状態を表す数値である含水率は、芝馬場路盤の芝の根より下の部分の水分状態を測定しています。
一方クッション値は芝の表面に重りを落下させた際の反発力を測定しており、芝の生育状況による影響も測定値に反映されます。含水率が芝馬場路盤のみの状態を表しているのに対し、クッション値は芝と路盤両方の状態を表します。
これらの特性からクッション値は同じ良馬場であっても、芝の含水率や芝の生育具合および路盤の締まり具合による影響を受けるため異なる値を示します。
クッション値は馬場表層のベースとなる芝草の種類によっても傾向が異なります。
札幌競馬場・函館競馬場で使用している洋芝3種混合(ケンタッキーブルーグラス、ペレニアルライグラス、トールフェスク)は地下部に細い根が密集したマット層を作るのが特徴で、このマット層がクッションとなり、また、保水量も多いことから、野芝の競馬場と比較し、クッション値は低くなる傾向があります。
本州以南の競馬場で使用している野芝(ノシバ)は地下部にほふく茎を持つことが特徴です。このほふく茎は地表付近を這うように広がり、競走馬の脚を支えるのに重要な役割を担っています。一方ほふく茎は洋芝のマット層にくらべ保水量が少なく、これらの特徴から野芝の競馬場のクッション値は洋芝馬場より高く出る傾向があります。
芝馬場の路盤は競走馬の走行や馬場管理作業車による踏圧により徐々に締め固められクッション性が失われていきます。そのため開催前にクッション性確保のための作業を行っています。代表的なものが「エアレーション」と「シャタリング」です。
「エアレーション」は芝馬場に小さな穴を一定間隔で開けて路盤の通気性を向上させるとともにクッション性を向上させる作業です。
「シャタリング」とは、ナタ状の回転刃で芝馬場に一定間隔で切り込みを入れていく作業で、さらに路盤を横方向に大きく揺さぶりほぐす効果もあり「エアレーション」以上に馬場のクッション性を高める効果があります。
JRAでは全ての競馬場で「エアレーション」と「シャタリング」を実施しクッション性の確保に努めています。
芝馬場のクッション値の基準は下表のとおりです。
芝馬場のクッション値 | 馬場表層のクッション性 | 馬場表層の水分状態 |
---|---|---|
12以上 | 硬め | 乾燥気味 |
10から12 | やや硬め | やや乾燥気味 |
8から10 | 標準 | 標準 |
7から8 | やや軟らかめ | やや湿潤気味 |
7以下 | 軟らかめ | 湿潤気味 |
馬場表層の状態との関係性や舗装種類等の違いによる数値の参考表は以下の通りです。
舗装種類 | クッション値 | 用途等 |
---|---|---|
ダスト舗装 | 63 | 校庭 |
クレイ舗装 | 27 | 校庭 |
ゴムチップ舗装 | 22 | 陸上競技場 |
砂入り人工芝 | 52 | テニスコート |
人工芝 | 18 | 東京競馬場下見所 |
芝 | 10 | 野球場 |
芝 | 9 | サッカー場 |
ニューポリトラック | 7 | 美浦トレーニング・センター調教コース |
ウッドチップコース | 4 | 美浦トレーニング・センター調教コース |
畳 | 7 | 柔道場 |
体育マット | 5 | 体育館 |
開催前日および当日に測定したクッション値は、JRAホームページ馬場情報にて公表いたします。
公表時刻は開催前日(金曜日)が昼過ぎ、開催当日は概ね9時30分頃を予定しています。
なお、測定時刻は各競馬場の調教時間や天候等によって異なるため、公表値に並記します。