世代交代の旗を掲げた上位2頭、ミスタースタニングがG1初制覇

時計の針を、1年前の香港国際競走当日（2016年12月11日）に戻す。香港カップ（G1）をモーリスが制した直後の第9レース、芝1200mのクラス2“ロードカナロアハンデキャップ”を断然の1番人気で制した馬がいた。外国調教馬で唯一香港スプリントを連覇した日本の名馬の名前を冠したレースを制した、その4歳（当時）のせん馬は、1年後、堂々の大本命として香港スプリント（G1）に駒を進め、見事にその期待に応えた。

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  ゴール前、抜け出したミスタースタニング（左）にディービーピン（中）が迫る

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  ミスタースタニングがG1初制覇を果たす

香港スプリントを2度制したエアロヴェロシティが去った後の香港の短距離戦線において、どの馬が次のトップとしてこの路線をけん引するのか。このレースに8頭出走した香港調教馬の年齢の内訳は、7歳馬が1頭、6歳馬が5頭、5歳馬が2頭というもの。そのうち2頭出走のG1馬（ラッキーバブルズ、ペニアフォビア）は、いずれも6歳馬。しかし、ゴール前まで火の出るような競り合いを演じたのは、5歳馬の2頭だった。

時計の針を、今度はレース3日前の枠順抽選の場に戻す。出走13頭中11番目のストーミーリベラル（せん5歳）が抽選を終えた時点で、残るゲート番は4番と12番。抽選を待つのは、4頭出しのジョン・サイズ厩舎のうちの2頭、ミスタースタニング（せん5歳）とディービーピン（せん5歳）であった。先に名前が呼ばれたのは、ミスタースタニング。騎乗するナッシュ・ローウィラー騎手が引き当てたのは“4”。どちらかと言えば外枠が不利な傾向の強い香港スプリントにおいて、残り物から文句なしのゲート番を引き当てた。ディービーピンは最後に残った12番枠。同じ厩舎の5歳馬2頭を大きく分けた明暗は、その3日後のゴールでの結果に直結する。

JRA独立プールにおける1番人気は、そのミスタースタニングで単勝オッズ2.0倍。2番人気が前年2着のラッキーバブルズ（せん6歳）で4.1倍、3番人気がレッツゴードンキ（牝5歳、栗東・梅田智之厩舎）で6.2倍。4番人気のザウィザードオブオズ（せん6歳、同9.9倍）までが単勝10倍以下でレースを迎えた。

好スタートを切ったのは、1、2番人気の2頭とペニアフォビア（せん6歳）。レッツゴードンキは若干タイミングが合わず後ろから。前3頭からクビ差ほど遅れたスタートのワンスインナムーン（牝4歳、美浦・斎藤誠厩舎）の二の脚が速く、あっという間に先頭を取り切る。しかし、戦前から「徹底逃げ宣言」をしていたペニアフォビアが、意地を見せるかのように鞍上のマシュー・チャドウィック騎手にひたすら手綱をしごかれ、3コーナーに入ったところで外から先頭を奪う。この時点でミスタースタニングは内1頭分を空けた3番手、そのもうひと列後ろのインコースをラッキーバブルズが続き、サインズオブブレッシング（せん6歳）とディービーピンがその外を併走した。

4コーナー手前で、ミスタースタニングはワンスインナムーンの外にじわりと並びかける。一方でラッキーバブルズは最内キープを選択し、最後の直線を迎える。進路が開けたミスタースタニングに対して、脚色が衰えたペニアフォビアとワンスインナムーンが壁になってラッキーバブルズは追い出しに手間取る。半ば強引に内からワンスインナムーンの前へと抜け出すが、その間にミスタースタニングは抜け出し、さらに外からディービーピンがミスタースタニング目がけて強襲。勝負の行方はこの2頭に絞られる。一気に半馬身差まで詰め寄られたミスタースタニングだったが、並ばれかけてからさらにもうひと伸び。最後はクビ差しのいで、同厩舎、5歳馬同士の対決を制した。

ゴール後、2頭の馬上で、ローウィラー騎手とオリビエ・ドゥルーズ騎手がハイタッチ。3着にスプリンターズS（GⅠ）5着以来の出走だったブリザード（せん6歳）。ブリザードを管理するリッキー・イウ調教師は、「久々でもいい走りだった。高松宮記念（GⅠ）を目指しますよ」と笑顔を見せた。出遅れながらも経済的なコース取りで、最後に大外から追い込んだレッツゴードンキが外国調教馬最先着の6着、ワンスインナムーンは12着に終わった。

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  久々のG1勝利に喜ぶローウィラー騎手とミスタースタニング

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  サイズ調教師（前列左から2人目）は香港スプリント初制覇

香港の年度表彰の中には、日本ではなじみのないものが2つある。そのうちのひとつが、デビューシーズンでもっとも好成績を残した馬に与えられるベストグリフィン（最佳新馬）で、もうひとつが、そのシーズンでもっともレーティングを上昇させた馬に与えられるモーストインプルーヴドホース（最大進歩馬匹）である。ミスタースタニングは2015-2016年シーズンのベストグリフィン、ディービーピンは昨シーズンのモーストインプルーヴドホースだった。共に将来性を嘱望される表彰で、その期待に見事に応える攻防を国際的な大舞台で示し、世代交代の旗を掲げてみせた。

ローウィラー騎手は、意外にも2014年4月にハナズゴールで制したオーストラリアのオールエイジドS以来のG1タイトルとなった。
「枠順抽選の段階で運がありました。レースの道中はとにかく『内ラチに寄らない』ことを心がけました。囲まれてしまえば元も子もありません」
手繰り寄せた強運を手放さないような騎乗であったことを、ローウィラー騎手はレース後に強調した。

また、意外といえば、サイズ調教師もこのレース初制覇。控えめに喜びながら、今後については、「海外遠征よりも、おそらく国内で戦っていく」と語った。

文：土屋　真光

6着 レッツゴードンキ 梅田智之調教師のコメント
「外から追い込んできましたが、スタートで出遅れたため流れに乗れませんでした。馬は本当に良く頑張ったと思います。来年また挑戦したいですね」

6着 レッツゴードンキ 岩田康誠騎手のコメント
「落ち着いていたのですが、ゲートの出が悪くて後ろからになってしまいました。もう少し上の着順を狙っていましたが、良く走ってくれたと思います」

12着 ワンスインナムーン 斎藤誠調教師のコメント
「スタートは上手く決まって良い位置を取れましたが、態勢が決まってから競りかけられて苦しくなってしまいました。残念です」

12着 ワンスインナムーン Z.パートン騎手のコメント
「他の馬に進路を邪魔されてしまいました」

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  レッツゴードンキ（岩田康誠騎手）

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  ワンスインナムーン（Z.パートン騎手）

	2017年12月10日（日） シャティン競馬場（香港）

5R	第19回 香港スプリント（G1）

３歳以上　定量			1200m　芝・右
賞金総額	：	18,500,000香港ドル	発走　 14:40 （現地時間）
１着賞金	：	10,545,000香港ドル	芝：良

着順	馬番 (ゲート)	馬 名　（生産国）	性 齢	負 担 重 量	騎手	タイム ・ 着差	馬 体 重 (kg)	調教師　（調教国）	単 勝 人 気
1	1　(04)	ミスタースタニング(AUS)	せん5	57.0	Ｎ．ローウィラー	1:08.40	490	Ｊ．サイズ(HK)	1
2	10　(12)	ディービーピン(NZ)	せん5	57.0	Ｏ．ドゥルーズ	クビ	519	Ｊ．サイズ(HK)	7
3	9　(03)	ブリザード(AUS)	せん6	57.0	Ｇ．モッセ	1 3/4	513	Ｐ．イウ(HK)	8
4	2　(01)	ラッキーバブルズ(AUS)	せん6	57.0	Ｈ．ボウマン	2 1/2	492	Ｋ．ルイ(HK)	2
5	5　(06)	アメージングキッズ(NZ)	せん6	57.0	Ｂ．プレブル	3	532	Ｊ．サイズ(HK)	6
6	12　(07)	レッツゴードンキ(JPN)	牝5	55.5	岩田　康誠	3 1/4	488	梅田　智之(JPN)	3
7	4　(08)	ザウィザードオブオズ(AUS)	せん6	57.0	Ｊ．モレイラ	3 3/4	530	Ｊ．サイズ(HK)	4
8	8　(13)	ザライトマン(GB)	せん5	57.0	Ｆ．ベルトラス	5	469	Ｄ．ギルマン(FR)	13
9	3　(09)	ペニアフォビア(IRE)	せん6	57.0	Ｍ．チャドウィック	5 3/4	524	Ａ．クルーズ(HK)	10
10	6　(10)	ノットリスニントゥーミー(AUS)	せん7	57.0	Ｔ．ベリー	8 1/4	522	Ｊ．ムーア(HK)	11
11	11　(11)	ストーミーリベラル(USA)	せん5	57.0	Ｓ．デソウサ	11	492	Ｐ．ミラー(USA)	9
12	13　(02)	ワンスインナムーン(JPN)	牝4	55.5	Ｚ．パートン	13 1/4	435	斎藤　誠(JPN)	5
13	7　(05)	サインズオブブレッシング(IRE)	せん6	57.0	Ｓ．パスキエ	23 1/2	463	Ｆ．ロオー(FR)	12

単勝	1	200円	1番人気	馬連	1-10	1,830円	6番人気	馬単	1-10	2,690円	7番人気
複勝	1 10 9	110円 400円 440円	1番人気 7番人気 8番人気	ワイド	1-10 1-9 9-10	750円 1,010円 5,190円	8番人気 11番人気 40番人気	３連複	1-9-10	8,830円	31番人気
								３連単	1-10-9	27,770円	84番人気

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