皐月賞（GⅠ）では、新馬、東京スポーツ杯2歳S、ホープフルSと負け知らず、メンバー中唯一の重賞2勝馬にして昨年のJRA賞最優秀2歳牡馬でもあるクロワデュノールが単勝オッズ1.5倍の断然人気に推された。が、結果は2着。この大本命を力強く差し切ったのは、ミュージアムマイルだ。

スプリングSを制したピコチャンブラックが先導するレース。クロワデュノールは京成杯勝ち馬ニシノエージェントらと好位を進む。若葉Sで1番人気に応えたジョバンニ、朝日杯フューチュリティS2着のミュージアムマイル、デビュー3連勝中のエリキング、きさらぎ賞快勝のサトノシャイニングらが続き、その後ろには共同通信杯1着のマスカレードボール、弥生賞2着のヴィンセンシオなどが構える展開となる。

向こう正面でファウストラーゼンが、弥生賞を勝利した時と同様一気にスパート、3コーナーで早くも先頭に並びかける。押し切りを許すまいと追随したクロワデュノールが直線で堂々と抜け出し、そのままゴールまで駆け抜けるかと思われた。

そこへ鋭く伸びてきたのがミュージアムマイルだ。鞍上ジョアン・モレイラ騎手が「直線手前でバランスを崩したけれど、立て直してからの瞬発力が素晴らしかった」と語った通り、力強い末脚を繰り出して突き抜ける。最後は、マスカレードボールの急襲をなんとか凌ぎ切ったクロワデュノールに1馬身半の差をつけてのゴール。朝日杯フューチュリティS2着、弥生賞4着と届かなかった重賞制覇をGⅠの大舞台で成し遂げたのである。

先週の桜花賞に続いての第一冠勝利で“マジックマン”の面目躍如となったモレイラ騎手は「パドックで跨った瞬間に素晴らしい馬だと感じたが、まだ成長できる」とミュージアムマイルを評価する。ならば日本ダービーでも大いに期待できるだろう。それともクロワデュノール以下の巻き返しがあるのか。第二冠を楽しみに待ちたい。

（谷川　善久）