NHKマイルC（GⅠ）では、朝日杯フューチュリティSを制したアドマイヤズーム、これをニュージーランドTで破ったイミグラントソング、チャーチルダウンズC勝ち馬ランスオブカオスらが好位へ殺到。さらに外からエルフィンS1着のヴーレヴーが交わしていくと、流れは緩まず、600メートル通過33秒4、1000メートル通過は56秒4と、一瞬たりとも息を入れられないラップが刻まれた。

ハイペースを利した差し切りを狙って、ファルコンS2着のモンドデラモーレやサウジアラビアロイヤルC勝ちのあるアルテヴェローチェ、桜花賞6着のチェルビアットと同4着のマピュース、ファルコンS1着のヤンキーバローズらは中団から、皐月賞6着のマジックサンズは後方に構える展開。実際、直線ではこれら待機勢が逆転劇を演じることとなる。

坂を上りながら先頭へと躍り出るアドマイヤズーム。が、後続各馬が末脚を炸裂させて次々と襲いかかってくる。なかでもひと際光る切れ味を見せたのがパンジャタワーだ。

「リズムを大切にした」と語る松山弘平騎手とともに中団を追走していたパンジャタワーが、一気に外から突き抜けていく。朝日杯フューチュリティSは12着、ファルコンSは4着に敗れていたが、その瞬発力は「東京で勝っている馬。差していい競馬をする。そういうイメージを抱いて乗った」という松山騎手の言葉通りの鋭さだった。

最後は、並んで伸びたモンドデラモーレ、内急追のマジックサンズ、馬群を割って出てきたチェルビアットと接戦になったものの、パンジャタワーがアタマ差先んじてゴール。京王杯2歳S以来の勝利を飾るとともに、2018年のこのレースで1番人気に推されながら12着に敗れた父タワーオブロンドンの無念をも晴らしたのだ。

「最後は必死過ぎて勝ったかどうかわからなかった。馬が力を出し切ってくれた」と松山騎手。無心の手綱さばきに馬も懸命に応えてつかんだ3歳マイル王の座である。

（谷川　善久）