無敗の二冠を目指すジャスティンミラノ、2着惜敗の雪辱を狙うコスモキュランダ、末脚自慢のアーバンシック、紅一点レガレイラなどの皐月賞組か。あるいは青葉賞のシュガークン、プリンシパルSのダノンエアズロック、京都新聞杯のジューンテイクらトライアル・前哨戦の覇者か。スプリングS勝利からここ一本のシックスペンス、NHKマイルCで戦列復帰のゴンバデカーブースも不気味な存在といえた。

だが、どのルートからでもない伏兵が東京優駿（日本ダービー）（GⅠ）を制することになる。勝者は、皐月賞をスタート直前に除外となったダノンデサイルだ。

メイショウタバルの出走取消で注目を集めた主導権争い。大外エコロヴァルツがハナを切ると、シュガークン、ジャスティンミラノ、シックスペンスらもスッと先行する。ダノンデサイルは鞍上・横山典弘騎手が「スタートが決まれば前へ行こう」と思い描いた通り、好位の内、最高のポジションで1000メートル通過62秒2の緩い流れに乗っていた。

勝負は直線の攻防へ。早め先頭のシュガークンを外からジャスティンミラノが交わしにかかるが、それ以上に力強い脚を見せたのがダノンデサイルだった。「ここまでいいリズム。ただしギアチェンジが速い馬ではないから、慌てず丁寧に追おう」という横山騎手に導かれて内ラチ沿いを突き、残り300メートルの地点で抜け出す。ダノンデサイルの脚色は最後まで衰えず、ジャスティンミラノに2馬身の差をつけてゴールへと達する。

皐月賞は、横山騎手が右前肢のわずかな跛行を感じ取り競走除外。そこから立て直しての戴冠に「自分の決断と、厩舎スタッフの馬の作り方に間違いがなかった。真摯に向き合えば馬は応えてくれる」と、これが日本ダービー3勝目、日本ダービー&JRA・GⅠ最年長勝利記録を更新した横山騎手は胸をなでおろす。

大ベテランの信念、そして“レース以外の部分が勝敗を分ける”という事実が感動と驚愕を与えた、そんな一戦であった。

（谷川　善久）