前夜、ドバイでは日本馬が大活躍。その余韻が冷めやらぬ中、国内でも春のスプリント王決定戦・高松宮記念（GⅠ）のゲートが開いた。

ハナを切ったのはレシステンシア。昨年このレースで2着、スプリンターズSと香港スプリントも2着と惜敗続きだが、実績は上位だ。1番人気を背負って17頭を先導する。

ジャンダルムら先行勢を前に置いて、京都牝馬Sを勝ったロータスランド、1200メートル戦に活路を求めたサリオス、シルクロードSの復活勝利で2番人気に推されたメイケイエールらは中団から前をうかがい、阪神C快勝のグレナディアガーズは後ろに控える。

後方馬群のインに構えたのがナランフレグだ。重賞未勝利ながら、近走はオパールS2着、タンザナイトS勝利、シルクロードS3着、オーシャンS2着と、毎レース必ず上位まで追い込んできている。この日も持ち前の鋭い末脚に懸けるべく、鞍上・丸田恭介騎手は「リズムだけを考えていた」という。

直線。レシステンシアにジャンダルムとキルロードの好位勢が並びかけ、さらには内から昨年4着のトゥラヴェスーラも肉薄する。ここへ割って入ったのがナランフレグだ。

「最近はインからさばくことも板についてきた。タンザナイトSでもこういう形で勝っている。自信を持って内を突けた」と丸田騎手が語った通り、激しい追い比べの間隙へと突っ込んでいくナランフレグ。前が壁になりそうな瞬間もあったものの、最後はグイッと抜け出すことに成功。5着までの着差がクビ、ハナ、クビ、クビという大接戦を制して、ナランフレグは重賞初制覇をGⅠの大舞台で果たしたのである。

デビュー16年目の丸田騎手、そして開業30年目の宗像義忠調教師にとっても初のGⅠタイトル。うれし涙とともに手にした、待望の栄冠である。

（谷川　善久）