牝馬クラシック第二弾・オークス（GⅠ）のゲートから18頭が飛び出した。

桜花賞と同様エリカエクスプレスがハナを切り、スイートピーS3着のケリフレッドアスク、フラワーC勝ち馬レーゼドラマらが続く。先行勢を見る位置には、たがいに牽制しあうように桜花賞馬エンブロイダリーと同2着のアルマヴェローチェ。フラワーC2着のパラディレーヌ、アルテミスS勝ちのあるブラウンラチェット、フローラSを差し切ったカムニャックなどは中団を形成し、桜花賞3着のリンクスティップは後方から徐々に押し上げていく。1勝クラスを勝ち上がったばかりのタガノアビーが最後方を追走する馬群は、淡々としたラップを刻んで4コーナーを回り、直線へと向かうことになる。

朝のうちに雨は降りやみ、昼過ぎには良馬場へと回復していた東京競馬場の芝コースで、切れ味を競う追い比べが始まる。粘り込みを図るエリカエクスプレスとケリフレッドアスクの間を割って、まずは力強く抜け出してくるアルマヴェローチェ。が、これを上回る勢いで弾けて、外からアルマヴェローチェに並びかけていったのがカムニャックだ。

「直線で前が開いた瞬間からの反応が素晴らしかった。気持ちを切らさず最後まで走ってくれた」と鞍上アンドレアシュ・シュタルケ騎手が振り返った通りの、鋭く、そして息の長いラストスパートを見せて、最後はカムニャックがアタマ差だけ先んじてゴールする。曾祖母ダンスパートナー譲りの瞬発力と勝負強さでつかんだGⅠ初制覇だ。

シュタルケ騎手にとってもJRAのGⅠは初制覇。凱旋門賞など数々のビッグレースを勝ち、母国ドイツではリーディングも獲得、前週には日本での通算100勝を達成した名手が「やっと夢を叶えることができた」と微笑む、記念すべき勝利となったのだった。

（谷川　善久）