最内からハナを切ったジョディーに率いられて、優駿牝馬（オークス）（GⅠ）は緩みのないペースで進んだ。やがて馬群は3コーナーから4コーナー、そして直線へ。フラワーCを圧勝したコントラチェックが前に出たものの、坂を駆け上がりながら加速したスイートピーS1着馬カレンブーケドールが一気に先頭を奪う。負けじと桜花賞3着のクロノジェネシス、4着のダノンファンタジー、フローラSで上位を争ったシャドウディーヴァとウィクトーリアらが追撃。桜の女王グランアレグリアこそ不在だったが、それを惜しいと感じさせないほどの壮絶な追い比べがスタンドを沸かす。

ここへ大外から加わってきたのがラヴズオンリーユーだ。新馬、白菊賞、忘れな草賞と3連勝中で、出走メンバーでは唯一の無敗馬、全兄にはリアルスティールがいる。そのスケール感から重賞初挑戦ながら1番人気に推されていた存在だ。

鞍上のミルコ・デムーロ騎手によれば「スタートも上手く出て、いちばんいい位置を取れた」と道中は思惑通り。ただし「4コーナーで思ったより後ろに下がってしまった。ヨーイドンの競馬になったのに不安だった」と、レースプランにわずかな狂いが生じたという。

が、それは杞憂に終わる。瞬く間にトップスピードへと達したラヴズオンリーユーは、次々と先行勢を交わし、粘るカレンブーケドールに馬体を併せに行く。

「瞬発力があり、最後までずっと伸びてくれた。負けたくないという気持ちの強い馬でもある」とデムーロ騎手が讃えた鋭い末脚と勝負根性を存分に発揮したラヴズオンリーユーは、ついにカレンブーケドールをクビ差ねじ伏せ、1着ゴールを果たすのである。

勝ち時計はレースレコードとなる2分22秒8。無敗でのオークス制覇は、クリフジ、ミツマサ、ミスオンワード、カワカミプリンセスに続く史上5頭目の快挙だ。デムーロ騎手も3歳クラシック完全制覇の偉業を達成。競馬史に名を残す新たな女王が、名手に導かれて誕生した、そんな瞬間であった。

（谷川　善久）