1年を締めくくる大一番、有馬記念（GⅠ）のゲートから16頭の精鋭が飛び出した。

アルゼンチン共和国杯を逃げ切ったミステリーウェイがここでもハナに立ち、前年の皐月賞2着馬で、本年もアメリカジョッキークラブCで3着に入るなど中山コースとの相性に自信を持つコスモキュランダも前へ。これらを交わして向こう正面で先頭を奪ったのは宝塚記念勝ち馬メイショウタバル。好位には今春香港で2つ目のビッグタイトルを手にしたタスティエーラ、中団ではドバイシーマクラシックを制したダノンデサイルや菊花賞3着のエキサイトバイオ、皐月賞馬ミュージアムマイルが脚を溜め、宝塚記念と天皇賞（秋）で3着のジャスティンパレス、エリザベス女王杯快勝の勢いで“グランプリ連覇”に挑むレガレイラは後方を進む。

ヒリヒリとした緊迫感の中で、冷静に力関係と流れを読んでいたのがミュージアムマイルの鞍上クリスチャン・デムーロ騎手だ。「ダノンデサイルが強敵」と考えてマークし、4コーナーでは「進路を作ってくれると信じていた」とダノンデサイルの背後から押し上げていく。

そして直線。早め先頭から粘りに粘るコスモキュランダをダノンデサイルが追い、その外からミュージアムマイルもスパート。馬群の間隙を突いて追い込んでくるのはレガレイラだ。激戦の末に、皐月賞を思い起こさせる切れ味でミュージアムマイルがコスモキュランダを半馬身捉える。「昨年（シャフリヤールに騎乗してハナ差2着）のリベンジができた」と喜びを爆発させ、手を突き上げるクリスチャン・デムーロ騎手とともに先頭ゴールを果たしたのである。

ミュージアムマイルのほか、マスカレードボール、クロワデュノール、エネルジコと、この世代には逸材が揃う。ダノンデサイルやメイショウタバルら4歳以上の実績馬も黙ってはいまい。来年の競馬も、また楽しみだ。そう感じさせる有馬記念だったといえそうだ。

（谷川　善久）