驚異的なレコードを演出したジャパンCと同様、キセキが速いラップで逃げる。これに続くのは宝塚記念とのグランプリ二冠を狙うミッキーロケット、ハードル界の雄オジュウチョウサン、牝馬のモズカッチャンなど。中団にはラストランを迎えたサトノダイヤモンド、天皇賞（秋）を制した1番人気レイデオロらが構え、その後ろには復活を期すシュヴァルグラン、アルゼンチン共和国杯勝ち馬パフォーマプロミス。ミッキースワローは最後方から末脚に懸ける。

6世代・16頭によって争われた今年の有馬記念（GⅠ）。唯一の3歳馬として参戦したのがブラストワンピースだ。

ステルヴィオがマイルCS、アーモンドアイがジャパンカップ、ルヴァンスレーヴがチャンピオンズCを勝利、3歳勢の快進撃が続いている。「ブラストワンピースもGⅠを獲れる馬」と言い続けてきたのが、デビュー以降コンビを組んできた池添謙一騎手だ。日本ダービーは5着、菊花賞は4着と惜敗したが、この日は絶好の仕上がり。「攻める競馬をしよう」と、先行勢を見る6、7番手でレースを進め、2周目の3コーナー過ぎから早くも進出を開始する。「後ろにはレイデオロ。でも前もしぶとい。このタイミングしかない」という信念のロングスパートだった。

直線。粘るキセキ、これに並びかけていくミッキーロケットを、ブラストワンピースが力ずくで交わし去る。そこへ急追してきたのは、やはりレイデオロだ。

「頑張ってくれ。何とかしのいでくれ」

鞍上の激励に応えて最後まで懸命に脚を伸ばすブラストワンピース。結局は外から詰め寄るレイデオロをクビ差振り切ることに成功する。

暮れの大一番で成し遂げた、悲願のGⅠ初制覇。“強い3歳”というこの秋の流れ、そして、ブラストワンピース自身の強さを証明する、渾身の先頭ゴールだった。

（谷川　善久）