皐月賞馬ジオグリフ、日本ダービー馬ドウデュースが、ともに不在となった菊花賞（GⅠ）。1勝クラスとセントライト記念を連勝してきたガイアフォースが1番人気、2勝クラスを差し切ったドゥラドーレスが3番人気に支持されたように“上がり馬にもチャンスあり”というのがファンの見立てだった。

だがレースを制したのは2番人気アスクビクターモア。弥生賞ディープインパクト記念1着、皐月賞5着、日本ダービー3着と、春シーズンに好成績を積み上げた存在である。

気合いをつけて逃げたセイウンハーデスが、緩みのないペースで隊列を引っ張る。先行勢を見る位置に神戸新聞杯1着のジャスティンパレスやガイアフォースが構え、青葉賞勝ち馬プラダリア、ドゥラドーレス、神戸新聞杯3着のボルドグフーシュらは中団、神戸新聞杯5着のヴェローナシチーは後方に控える。

アスクビクターモアは先頭から3、4馬身の間隔を置いて2番手。鞍上の田辺裕信騎手は「抑え込むより、力まないよう自分のペースで」という追走を心がけていた。

3コーナーから4コーナー。徐々に前との差を詰めたアスクビクターモアは、先頭を奪い取り、さらにリードを広げて直線へと向かう。「瞬発力勝負より持久力勝負の方が分はある。馬の力を信じて動かしていった」と田辺騎手。この積極策が実を結ぶこととなる。

力を振り絞るアスクビクターモア。最後はボルドグフーシュとジャスティンパレスに詰め寄られたものの、追撃をハナ差だけ振り切ってのゴール。3分2秒4のコースレコードを叩き出すとともに、3歳クラシック最後の一冠を手中に収めたのだった。

強い相手と戦い続けてきた経験値、その財産を存分に生かした勝利といえるだろう。「一戦一戦パワーアップしている」との田辺騎手の言葉を信じるなら、今後もアスクビクターモアは同期のライバルや古馬勢とぶつかりながら成長し、好勝負を演じてくれるはずだ。

（谷川　善久）