東京優駿（日本ダービー）（GⅠ）では、皐月賞1から3着馬のサートゥルナーリア、ヴェロックス、ダノンキングリーに人気が集中。とりわけ、無敗のまま第一冠を制したサートゥルナーリアには“5連勝で二冠達成”の期待がかけられ、単勝オッズ1.6倍の支持を背負っての出走となった。が、レースは衝撃の結末を迎えることになる。

第86代日本ダービー馬に輝いたのは、12番人気・単勝オッズ93.1倍の伏兵ロジャーバローズだ。

青葉賞を逃げ切ったリオンリオンが、この日も1000メートル通過57秒8のペースで快調に飛ばす。縦に長い隊列の5番手にはガッチリと手綱を引かれてダノンキングリー、その後方にヴェロックス。立ち上がるようなスタートとなったサートゥルナーリアも中団まで盛り返していた。

ロジャーバローズは、逃げ馬と距離を取り、後ろの先行集団も離しての2番手。緩みのないピッチを刻みながら、鞍上の浜中俊騎手は「ある程度はペースが流れる展開で競馬をしたかった。思い描いたプランの中で一番いい条件だ」と、この展開と位置取りを歓迎していた。

そして直線。一気に仕掛けられたロジャーバローズは坂を駆け上がりながら前に迫り、残り400メートルで先頭へと躍り出る。懸命に追ってくるのはダノンキングリーだ。だがロジャーバローズは、並ばれてからもうひと踏ん張り。ここまで5戦2勝、重賞は未勝利ながら、勝つときには相手を競り落とし、負けても僅差に食い下がる無類のしぶとさがこの馬の身上だ。その持ち味を最大限に発揮したロジャーバローズは、ダノンキングリーをクビ差振り切り、追い込んできたヴェロックスを3着に、サートゥルナーリアを4着に封じ込め、2分22秒6のレースレコードでゴールを駆け抜けたのだった。

「バテずに長く脚を使ってくれる馬。持久力を生かす、イメージ通りの競馬ができた」と浜中騎手。確かに、その言葉通りのレースぶりでつかんだ大金星の栄冠である。

（谷川　善久）