安田記念にはマイル路線を歩んできた馬だけでなく、高松宮記念の上位馬や海外G1で好成績を収めた馬など、さまざまな路線の活躍馬が集まる。近年、このハイレベルな一戦を制した馬では、2013年のロードカナロア、2015年のモーリス、2019年のインディチャンプ、2020年のグランアレグリアが下半期にもGⅠタイトルを手中にしている。今回は過去10年の結果を参考に、レースの傾向を分析していく。
まず注目したいのが牝馬の成績で、過去10年では冒頭で触れたグランアレグリア(2020年1着、2021年2着)のほか、アエロリット(2018年、2019年共に2着)とアーモンドアイ(2019年3着、2020年2着)がそれぞれ2回ずつ3着以内に入り、3着内率は35.3%と牡・せん馬に大きな差をつけている。これら3頭は共にGⅠの優勝経験があり、GⅠを勝っていた牝馬は、過去4年に限れば〔1・4・1・2〕(3着内率75.0%)と好走率が非常に高いだけに、出走してきたらマークしておくべきだろう。〔表1〕
性 | 成績 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
---|---|---|---|---|
牡・せん | 9-6-9-119 | 6.3% | 10.5% | 16.8% |
牝 | 1-4-1-11 | 5.9% | 29.4% | 35.3% |
過去10年の3着以内馬延べ30頭中21頭は東京競馬場の重賞で優勝した経験を持っていた。近年は特にこの傾向が強く、過去5年の3着以内馬のうち2018年優勝のモズアスコットを除く延べ14頭に東京競馬場の重賞を制した実績があった。そのモズアスコットにも2勝クラスのレースとはいえ東京競馬場での優勝経験があっただけに、東京競馬場で全く好走経験がない馬は割り引きが必要だろう。〔表2〕
経験の有無 | 成績 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
---|---|---|---|---|
あり | 6-9-6-68 | 6.7% | 16.9% | 23.6% |
なし | 4-1-4-62 | 5.6% | 7.0% | 12.7% |
過去10年の前走別成績を見ていくと、3着内率はJRA・GⅠ組が最も高い数値をマークしており、なかでもJRA・GⅠを勝って臨んだ馬が〔1・2・2・2〕(3着内率71.4%)と好成績を収めているほか、前走で海外のG1を勝っていた馬も〔1・1・1・3〕(3着内率50.0%)と好成績。ビッグレースを制して勢いに乗る馬は信頼できるとみていいだろう。一方、主要な前哨戦である読売マイラーズCを勝って臨んだ馬は〔0・0・1・8〕と振るわず、京王杯スプリングCの優勝馬も〔0・0・1・7〕と苦戦していることは覚えておきたい。〔表3〕
前走 | 成績 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
---|---|---|---|---|
JRA・GⅠ | 3-5-2-30 | 7.5% | 20.0% | 25.0% |
JRA・GⅡ | 3-4-7-66 | 3.8% | 8.8% | 17.5% |
JRA・GⅢ | 2-0-0-13 | 13.3% | 13.3% | 13.3% |
オープン特別 | 1-0-0-5 | 16.7% | 16.7% | 16.7% |
地方のレース | 0-0-0-1 | 0% | 0% | 0% |
海外のレース | 1-1-1-15 | 5.6% | 11.1% | 16.7% |
前走の上がり3ハロンタイム(推定)も重要で、過去10年の優勝馬のうち前走で国内のレースに出走していた9頭中7頭は、前走の上がり3ハロンタイム(推定)が2位以内だった。東京競馬場は最後の直線が長く末脚勝負になりやすいため、安田記念でも道中は中団から後方に控えた馬が差し切るケースが目立つ。前走でメンバー中上位の上がり3ハロンタイム(推定)をマークしていたような馬を重視したい。〔表4〕
順位 | 成績 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 |
---|---|---|---|---|
2位以内 | 7-5-3-35 | 14.0% | 24.0% | 30.0% |
3位以下 | 2-4-6-79 | 2.2% | 6.6% | 13.2% |
過去5年の優勝馬の戦績を振り返ると、5頭中3頭はそれまでに出走した国内の全レースで単勝3番人気以内に支持されていた。残る2017年のサトノアラジンと2021年のダノンキングリーは4番人気以下だったのがGⅠでの1回だけ。この2頭は、当レースでの単勝人気がサトノアラジンは7番人気、ダノンキングリーは8番人気となっていたが、その低評価を覆してマイル王の座に就いた。2018年の優勝馬モズアスコットも9番人気だっただけに、過去のレースで上位人気に支持され続けてきた馬は、当レースでの単勝人気が低くても注目しておいて損はないだろう。〔表5〕
(高那実 マヤ)
年度 | 優勝馬 | 国内のレースの通算出走回数 | 単勝3番人気以内だったレース数 | 単勝4番人気以下だったレース |
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2017年 | サトノアラジン | 22戦 | 21戦 | 2014年菊花賞(9番人気) |
2018年 | モズアスコット | 10戦 | 10戦 | なし |
2019年 | インディチャンプ | 9戦 | 9戦 | なし |
2020年 | グランアレグリア | 7戦 | 7戦 | なし |
2021年 | ダノンキングリー | 11戦 | 10戦 | 2020年安田記念(5番人気) |
ご注意 当コーナーの情報は、特別登録の情報に基づき制作されております(データ分析は特別登録発表前に執筆されたものです)。出走回避・出走取消などによりレースに出走しない可能性がございます。また、当コンテンツの内容においては、JRAが特定の馬の応援や推奨などを行うものではありません。