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昭和62年(1987年) 第48回菊花賞(GI)
サクラスターオー VS ゴールドシチー
人はそれを“奇跡”と呼んだ
1987年 第48回菊花賞(GI)
 アメリカの小説家マーク・トゥエインは「真実は小説よりも奇異である。小説は起こりうることに即さねばならないが、真実はそうではないからだ」と記しているが、確かに現実の世界にはフィクションが及びもつかないような驚きが幾つも転がっている。例えば、身の回りに溢れている多くの常識について私たちは不変の真理と思い込みがちだが、それらは日々の出来事や事象から導き出された共通認識(あるいは仮説)に過ぎず、ある日、たったひとりの天才によって180度覆されてしまうことさえある。
 時を遡ること20年、若者や女性の支持を取り込みながら競馬人気が右肩上がりのカーブを描いていた昭和62年に、それまでの常識を覆す“奇跡”の物語は誕生した。主人公は、1勝馬の身で弥生賞を勝ち、続く皐月賞でマティリアルをはじめとする有力馬を一蹴したサクラスターオー。器用なレースさばきとずば抜けた瞬発力でクラシック第一冠を制した彼は、その後に発症した繋靭帯炎によってダービー断念を余儀なくされた。しかし出走叶わなかったレースの3日後、平井雄二調教師は不遇を託(かこ)つ間もなくサクラスターオーをいわきの馬の温泉へと送った。脚元の治療と同時に、プールで馬の心肺強化を図るためだった。残る一冠・菊花賞への夢を、陣営はまだ捨てていなかったのである。
 サクラスターオーが美浦へ帰厩したのは菊花賞の2か月前。だが脚のモヤモヤは容易に解消されず、結局は前哨戦を使えないまま本番を迎えることになった。今でこそ、牧場など外部の調教施設でキッチリ乗り込まれた馬がぶっつけで大一番に臨むことも珍しくないが、まだ十分な設備の整っていなかった時代に、半年も実戦から遠ざかっていた馬がいきなり3000メートルの菊花賞を戦うというのであるから、無謀と言われても仕方のない挑戦であった。ところが蓋を開けてみれば衝撃の結末が待っていた。最後の直線、1番人気のダービー馬・メリーナイスはずるずると後退。これにかわってピンクの勝負服・漆黒の馬体のサクラスターオーが馬込みを割って力強く伸びてきたのである。久々のレースとは到底思えない、燃えるようなラストスパート。外から鋭く迫る2番人気ゴールドシチーの追撃も及ばず2着まで。18頭立て9番人気の皐月賞馬が、王者の走りを見せつけたのだった。
 セオリーに外れているからといって諦めてしまえば、決して手に入らなかった栄冠。常識という、ある意味ではどんなライバルよりも恐ろしい相手にサクラスターオーは勝ったのである。人はこの日の勝利を“奇跡”と呼んだ。信念と不断の努力を貫いた人々と、不屈の闘志でターフに返り咲いた名馬に対する畏敬の思いを込めて。
 第21回 アルゼンチン共和国杯
 中山競馬場 2500メートル(芝・右) 晴・稍重・12頭
着順 枠番 馬番 馬名 性齢 斤量 騎手 調教師 タイム/着差 人気
1 5 9 サクラスターオー 牡4 57 東  信二 平井 雄二 3:08.0 9
2 1 2 ゴールドシチー 牡4 57 河内  洋 清水 出美 1/2 2
3 6 12 ユーワジェームス 牡4 57 安田 富男 新関  力 1/2 11
4 2 4 メグロアサヒ 牡4 57 飯田 明弘 境 勝太郎 1/2 16
5 5 10 サニースワロー 牡4 57 大西 直宏 中尾 銑治 3/4 7
6 5 11 レオテンザン 牡4 57 武   豊 吉野  勇 6
7 1 1 カイラスアモン 牡4 57 竹原 啓二 松山吉三郎 12
8 7 16 メジロゴスホーク 牡4 57 村本 善之 大久保正陽 2 1/2 5
9 8 18 メリーナイス 牡4 57 根本 康広 橋本 輝雄 1/2 1
10 2 3 ニホンピロマーチ 牡4 57 田原 成貴 伊藤 雄二 ハナ 8
11 7 17 ウイルドラゴン 牡4 57 岡部 幸雄 清水 利章 クビ 3
12 3 5 ロングムテキ 牡4 57 松田 幸春 松田由太郎 ハナ 17
13 7 15 マティリアル 牡4 57 柴田 政人 田中 和夫 1 1/4 4
14 4 8 ニシノミラー 牡4 57 嶋田  功 藤本 冨良 1/2 13
15 6 13 ジャックボーイ 牡4 57 田島 良保 佐藤 征助 10
16 4 7 ダイカツケンザン 牡4 57 西浦 勝一 福島  勝 1 1/4 15
17 6 14 エイシンテンペスト 牡4 57 丸山 勝秀 湯浅 三郎 18
18 3 6 リワードランキング 牡4 57 久保 敏文 鶴留 明雄 14
※馬齢は旧年齢表記 
 
 2007.10.20 レーシングプログラム掲載


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