サクラエイコウオー (平成8年 七夕賞) 2002.7.5更新
   
     
 
 新馬券の先行発売もあり、注目の開催となった今年最初の福島競馬。高配当も飛び出し、大いに盛り上がりを見せた開催も今週末が最終週。締めくくりの7日(日)には、古馬の中距離重賞・七夕賞がメインレースに行われます。 
 ハンデ戦ということもあり、ここ10年間で1番人気馬がわずかに2連対と苦戦しているレース。今年も実力伯仲のメンバーが揃い、ファンにとっては予想しがいのある難解な一戦になりそうです。

 今回の優勝馬物語の主役、平成8年の七夕賞を制したサクラエイコウオーは5番人気での優勝でしたが、この馬は3歳時、弥生賞を圧勝するなどクラシックロードでも注目された素質馬。本来ならローカルGIIIでは主役としての走りが期待される馬ですが、気性面の問題と脚部不安でなかなか素質を生かすことができずに関係者をやきもきさせた馬でした。


 サクラエイコウオーは父がマルゼンスキー、母がJRA5勝馬で半弟にサクラセカイオー、近親にダービー馬サクラチヨノオーなどがいる良血馬サクラハツユキという血統で、平成3年6月に、静内の谷岡牧場で生まれました。

 牧場時代は素直な気性で人の言うことをよく聞く馬だったそうですが、いざ実戦を迎えると、管理を任された境勝太郎調教師、手綱を取る小島太騎手もびっくりするほどの気性難。血統や調教での動きから、デビュー戦では単勝1.4倍の圧倒的な人気を集めたものの、4コーナーで馬が曲がろうとせず、逸走でまさかの競走中止。鞍上の小島騎手も手綱にしがみつくのが精一杯で、あわや外ラチに激突するかという恐ろしい走りをみせたのでした。

「調教ではこんなに気難しい面は出していなかったんだけど・・・」
と、レース後にさかんに首をひねった小島騎手。その後、2戦目に未勝利戦、4戦目に500万条件戦を楽勝して能力の確かさは証明して見せたものの、小島騎手にしてみれば、いつまた勝手な方向に走り出さないかという不安を抱えての騎乗。
「能力は半端じゃないんだが、とにかく気難しい。追うと、どこに飛んで行くか分からないんだ」
と、気性面の難しさを嘆く騎乗が続きました。

 それでも、3歳2戦目にオープンのヒヤシンスSを勝って3勝目をマーク。関係者を困らせながらも、クラシック出走へ向けて着実に賞金を加算していくあたりが、やはり良血の成せる業なのでしょう。
 続く弥生賞は、重賞2連勝中の関西馬ナムラコクオーと、3戦無敗の関東馬エアチャリオットが人気を分け合ったレースですが、4番人気の評価で出走したサクラエイコウオーは楽に先手を取ってマイペース。最後の直線に入ると二の脚を繰り出してエアチャリオット以下の追撃を2馬身半差で楽々と完封。素質の高さを存分に見せつけ、皐月賞の有力馬に急浮上することになったのでした。

 しかし、重賞を勝っても素直に喜びを表せなかったのが小島騎手。
「突然立ち止まったりして満足な返し馬もできず、ゲートの中でも2回、立ち上がって暴れました。レースに行っても、馬上で少しでも動くと驚くし、コーナーでは相変わらず外へ逃げる素振り。直線でもステッキを入れると内にもたれてしまうし、本当に最後までヒヤッとしました」
と、皐月賞トライアルを勝った騎手とは思えない厳しい表情で、サクラエイコウオーの気性面の問題を指摘。デビューから8戦して弥生賞勝ちを含む4勝の成績は優秀なものですが、GI級の素質を感じるからこそ、小島騎手の言葉も厳しいものになったのでしょう。

 ただでさえ、この年のクラシックロードには爆発的な強さを見せるナリタブライアンという強力なライバルがおり、持てる力をすべて発揮しても打ち負かすのは至難の相手。まして気性面のウイークポイントを抱えての勝負では、戦う前から結果は見えていました。
 皐月賞は先手を取ったものの、ナリタブライアンから1秒6遅れの8着、ダービーは好位で流れに乗りながら、勝負所でまたも外にふくらむ癖を見せてレースにならずナリタブライアンから2秒5遅れの11着に敗退。このダービー後は脚部不安に苦しめられ、間に1戦を挟んで10カ月と1年の長期休養を余儀なくされることになります。

 5歳4月にようやく戦列復帰を果たしたものの、爆弾を抱える脚の状態が実戦での走りに耐えられたのはわずかに4戦だけ。全盛時の力を期待するのは難しいと評価は上がりませんでしたが、サクラエイコウオーは結果的に現役最終戦となる七夕賞で弥生賞馬の意地を見せます。

 京王杯SC11着、エプソムC12着と凡走を続けての出走だったサクラエイコウオーは、七夕賞に5番人気の評価で出走。初コンビの西田雄一郎騎手を背に軽快なペースで逃げまくり、4コーナーをスムーズに回ると余力十分にラストスパート。懸命に追いすがる後続馬を楽々と突き放し、最後は4馬身の大きなリードを取って先頭でゴールを駆け抜けました。 

「ここではスピードが違う感じです」
と、このレースが初めての重賞制覇だった西田騎手も、本物のオープン馬のスピードを初めて体験して興奮を隠せない表情。
「4馬身差は当然と言える結果。これから休養分もどんどん巻き返してくれるでしょう」
と、西田騎手はサクラエイコウオーの本格化に太鼓判を押しました。

 しかし、サクラエイコウオーは七夕賞後にまたも脚部不安が出てしまい休養。結局、この脚部不安は完治せず、平成9年12月に登録を抹消して競走生活から引退しています。
 素質は誰もが認める一級品で、七夕賞ではこれまでにない力強い勝ちっぷりを見せたサクラエイコウオー。本格化の兆しが見えていただけに、脚部不安の再発は本当に残念でした。



※年齢は新表記。