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西の中央競馬は今週から舞台を小倉へ移します。開幕週の絶好の馬場状態で行われる重賞は、古馬の中距離戦・北九州記念。実績馬と上がり馬の対決が楽しみな一戦で、今年も見ごたえのある好レースが楽しめそうです。
今回の優勝馬物語の主役であるイブキファイブワンは平成6年の北九州記念優勝馬で、同馬を管理していたのは栗東の橋口弘次郎調教師。橋口きゅう舎はこの北九州記念で過去に1勝、2着3回の成績を残していますが、今年も有力馬の1頭、ロサードを出走させる予定。同馬は一昨年、昨年と2年連続で北九州記念を2着に惜敗しており、今年は3度目の正直となるか注目の一戦。宮崎県出身とあって、九州の重賞には意欲的に参戦する橋口調教師に、北九州記念2勝目をプレゼントできるでしょうか。
デビュー2戦目に重賞の新潟3歳Sを勝つなど早い時期から活躍したロサードと違い、イブキファイブワンはゆっくりと出世の階段を上っていった晩成タイプの馬。父が菊花賞馬インターグシケン、母がネヴァービート産駒の未勝利馬インターロンシャンという地味な血統の父内国産馬で、平成3年1月に京都競馬場でデビューしています。
初勝利に4戦を要したイブキファイブワンは、3歳時は10戦1勝と勝ち星を伸ばすことができませんでしたが、4歳になると元々あった先行力に粘りが加わり始め、1年間で12戦3勝、2着3回の好成績をマーク。準オープンでの戦いになった5歳時は1勝だけとやや苦しんだものの、9月に準オープンを勝ち上がってからは重賞のカブトヤマ記念、福島記念で連続2着に好走。下級条件からじっくりと力をつけてきたイブキファイブワンは、ようやく本格化の時期を迎えようとしていました。
6歳初戦の谷川岳S(新潟)を6着、続く新潟大賞典も6着に凡走してしまったイブキファイブワンですが、谷川岳Sは4ヵ月半の放牧休養明け、新潟大賞典はやや距離が長かったことが敗因で、休み明け3戦目の金鯱賞では、関係者も巻き返しに力の入るところでした。
ところが、レース当日のイブキファイブワンは、橋口調教師も驚いたプラス14キロの重目の馬体。レースではこの重目の影響で引っ掛かってしまい、好位追走も直線では失速してズルズル後退。8着と思わぬ大敗を喫してしまったのでした。
6歳の3戦ですっかり評価を落としてしまったイブキファイブワンは、相手がグンと楽になった続く北九州記念でも評価が上がらず、6番人気での出走。単勝3.0倍の1番人気馬には、重賞勝ちのないフジワンマンクロスが支持されました。
レースはロングドリーム、フジワンマンクロス、インターシュプールなどの先行争いで緩みのない流れになり、道中の折り合いに不安のあるイブキファイブワンにとっては理想的な展開。太目だった馬体もこのレースでは8キロ絞れ、力を発揮できる状態に仕上げられていました。
イブキファイブワンとコンビを組む芹沢純一騎手は、他馬の動きに惑わされることなく折り合いに専念し、残り600メートル地点でゴーサイン。手ごたえの割に先頭に立ってからの反応はやや鈍かったものの、内からしぶとく追いすがるマルブツパワフルを最後はクビ差押さえての先頭ゴール。低評価を覆す見事な走りで、初めての重賞タイトル獲得を果たしました。
「少し早いかなとは思ったんですが、直線ではとにかく必死に追いました。残り200メートルあたりでステッキが折れてしまい焦りましたが、そこからは我慢、我慢と声をかけながら追いました。人馬揃っての重賞初制覇、お互いにやっと勝ったというところですかね」
デビュー7年目の初重賞制覇に、はにかんだような笑顔を見せた芹沢騎手。
少しずつ、着実に力をつけた人と馬が鮮やかに素質を開花したのが、この年の北九州記念でした。
北九州記念優勝後、イブキファイブワンは小倉記念2着、朝日チャレンジC4着、カブトヤマ記念2着の成績を残し、GIIIクラスでは力上位のレース振りを見せます。連戦の疲れもなく、好調を持続したイブキファイブワンは6歳最終戦に愛知杯に出走。父内国産馬限定重賞だけに、2つ目のタイトル獲得のチャンスは大きいと見られていましたが、向正面で前の馬に触れてつまずき、芹沢騎手が落馬する思わぬアクシデント。イブキファイブワン自身も、脚部を骨折する重傷を負っており、残念ながら安楽死の処置が取られました。
「僕の騎乗ミス。仕掛けに迷いがあった。かわいそうなことをしました」
と、がっくりと肩を落としたレース後の芹沢騎手。ようやく本格化を迎え、重賞戦線でその強さを発揮しようとしていた時期の予想外の事故。関係者にとっては、本当に無念のアクシデントになりました。
※年齢は新表記、レース名は当時の表記。
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