フジキセキ (平成6年 朝日杯3歳S) 2001.12.7更新
   
     
 
 熱戦の続いている秋のGIシリーズですが、早いもので残す平地GIはあと2レース。今週は中山競馬場に2歳牡馬の素質馬が揃い、朝日杯フューチュリティSが行われます。 
 平成5年のナリタブライアン以降、優勝馬から翌年のダービー馬こそ誕生していませんが、バブルガムフェロー、グラスワンダーなど歴史に名を残す名馬が活躍しているこのレース。今年の優勝馬は来春、GI戦線でどんな活躍を見せてくれるのでしょうか。 

 今回の優勝馬物語の主役であるフジキセキは、この朝日杯の平成6年の優勝馬。サンデーサイレンスの初年度産駒として競走生活を送ったこの馬は、クラシックを前に屈腱炎を発症してしまい4戦4勝の無敗のままターフを去りました。 
 長期の休養で復帰を目指す道もありましたが、
「1年以上休ませても治るという見込みはない。それなら、将来は種牡馬になる馬なのだから、早く引退させてあげた方がいいのではないか」
と、生産者である社台ファームの吉田照哉さんが種牡馬入りを提案。オーナーがこれを了承する形で、3歳春での引退が決まったのでした。

 クラシック戦線の主役から急きょ、生産界期待の種牡馬として北海道に向かったフジキセキ。シーズン途中にもかかわらず、118頭の種付け頭数を確保する人気振りでその後も人気は高まるばかり。昨年はついに種付け頭数が200頭を超え、サンデーサイレンスの後継種牡馬という評価にふさわしい人気を集めています。
「フジキセキの産駒にクラシック制覇の期待をかけたい」
フジキセキの引退が決まったとき、関係者の多くがこの言葉を口にしましたが、それが現実になる日は恐らく、そう遠いことではないのでしょう。


 フジキセキは父サンデーサイレンス、母が仏ダービー馬ルファビュルー産駒のアメリカ産馬ミルレーサーという血統の青鹿毛馬で、北海道千歳市の社台ファームで平成4年4月に生まれました。 
 垢抜けした均整の取れた馬体は当歳時から目立っており、順調に育成期間を終えると、栗東の渡辺栄きゅう舎へ入きゅう。牧場で初めてその馬体を見たときから大きな期待をかけていた渡辺調教師ですが、坂路で楽走のまま古馬を圧倒する動きを見て、
「これはちょっと物が違うな」
と、期待通りの大物であることを確信したのだそうです。

 ただ、スタートに不安があったことから直線の長い競馬場で初戦を走らせたいと考え、馬房の空きを待ってフジキセキを新潟へ。騎乗を依頼した蛯名正義騎手には、
「とにかく直線に向くまではじっとしていてくれ」
と指示を与えレースを迎えました。

 フジキセキのデビュー戦は芝1200メートル戦。予想通りスタートでやや出遅れたフジキセキですが、行き脚がついてからは余力十分に好位を追走し、直線で楽々と先頭を奪うと、軽く気合をつけられただけで2着の経験馬シェルクイーンに8馬身差をつける豪快な勝ちっぷり。手綱を取った蛯名騎手もこの強さには本当に驚いた様子で、
「桁が違いましたね」
と、フジキセキの底知れぬ強さに感心しきりの表情を見せました。 

 新馬戦を勝っても負けても、新潟ではフジキセキに1戦しかさせるつもりのなかった渡辺調教師。予定通りレース間隔を取って2戦目は阪神のもみじS(芝1600メートル)。きゅう舎の主戦、角田晃一騎手を背に単勝1.2倍の圧倒的な1番人気に支持されたフジキセキはプラス14キロの馬体重も問題にせず、後のダービー馬タヤスツヨシに1馬身1/4差をつけてのレコード勝ちを飾りました。 

 他馬を子供扱いの2連勝で一躍、クラシック候補として注目を集める存在になったフジキセキ。続く朝日杯3歳Sでも、重賞初挑戦ながら単勝1.5倍と断然の1番人気に支持されレースを迎えることになります。2戦目で増えていた馬体からさらに6キロ増の馬体でしたが、決して太目という印象ではなく、力の出せる仕上がり。フジキセキ同様、ここまで2戦2勝の成績を残している外国産のスキーキャプテンという不気味な伏兵の出走もありましたが、
“この馬の素質はGIでも通用する”
と角田騎手はフジキセキの力を信じ、大本命馬のプレッシャーをはねのけてレースに臨みました。 

 ニッシンソブリンが1000メートル通過・58秒7という緩みのない流れで馬群を引っ張ったレースですが、出走頭数が10頭と少なかったこともあり、フジキセキは前に馬がいなくなると行きたがり、掛かり気味の追走になってしまいます。道中で掛かったことが最後に影響したのかゴール前、末脚勝負に賭けていたスキーキャプテンの猛追を受けたフジキセキですが、馬体を併せての叩き合いにも角田騎手は最後までムチを使わないまま。着差はクビと辛勝だったフジキセキですが、角田騎手はどこまで行っても抜かれないという確かな手ごたえを感じていたようです。

「デビューからの3戦、成長期にあるようで10キロ単位で体が増えている。骨や腱も同時に成長してくれればいいのですが、なかなか難しいものです。この時期は無理な仕上げをしたくないですしね」
1戦ごとにたくましさを増すフジキセキを誇らしく思いながらも、その急激な馬体の変化に不安も感じていた渡辺調教師。その不安は残念ながら、3歳初戦の弥生賞で的中することになります。

 朝日杯からプラス16キロの508キロと、朝日杯からさらにひと回り馬体を成長させて弥生賞に出走してきたフジキセキ。レースでは直線でホッカイルソーの猛追を受け一旦はクビほど前に出られる危ない場面がありながら、ゴール前100メートルでエンジンがかかると、あっと言う間にホッカイルソーに2馬身半差をつける驚異的な瞬発力を披露。そのあまりの強さにはクラシックを前に、
「三冠制覇は間違いない」
の声が聞かれたほどでした。 

 しかし、フジキセキの急激な成長振りと能力の高さに脚元がついに悲鳴をあげたのか、弥生賞後に屈腱炎を発症していることが判明。回復の見通しが立たないほどの重い症状であることから、3歳春での種牡馬入りが決まりました。 
 関係者にとっては本当に辛い決断でしたが、サンデーサイレンスの血をのどから手が出るほど欲しい生産界にとっては、代表産駒の突然の種牡馬入りは朗報。その人気は沸騰し、フジキセキはいきなり人気種牡馬の仲間入りをすることになりました。

 突然の種牡馬入りが影響したのか、初年度の産駒成績はひと息でしたが、2年目以降はダイタクリーヴァ、テンシノキセキ、キタサンヒボタンなど活躍馬を次々と送りだし、その評価はさらに上昇中。ここまで5戦4勝の好成績を残しているキタサンヒボタンには、来春の桜花賞で父の果たせなかったクラシック制覇の期待がかかっています。



※年齢は新表記、レース名は当時の表記。