昭和54年(1979年) 第28回日刊スポーツ賞金杯(日刊スポーツ賞中山金杯)優勝馬
 白い稲妻 シービークロス
 
   
 
 「個性があるのは馬であって、騎手ではない」
 昭和60年版の中央競馬騎手名鑑に、あるジョッキーのこんな言葉が載っている。その人物こそ、思い切った逃げや追い込みでファンを魅了した吉永正人騎手(現調教師)である。“吉永流”とも呼ぶべき独特のスタイルは、見た目とは逆に、小細工を弄(ろう)さず、馬の気分を第一に考えたものであり、その結果として多くの馬の長所を引き出し、後世に残る名場面を演出してきた。本稿の主人公シービークロスもそのなかの1頭で、大レースの勝ち星こそないが、無二の個性派として愛された優駿である。
 前を争う馬群からぽつりと離れ、ひとり後方を行く寡黙な追走者。デビューの頃から、シービークロスはそういう馬だった。脚質同様に競走人生も遅咲きで、初めて重賞を勝ったのは旧5歳の日刊スポーツ賞金杯。そんな彼も同年の秋には“実り”の時を迎えた。最後尾の孤独な指定席から追い込みをかけた毎日王冠で、グランプリホースのカネミノブを2馬身ちぎり捨てる快勝を飾ったのだ。ちなみに勝ちタイムの1分59秒9は、東京競馬場の芝2000bで初めて2分台の壁を破ったものであった。さらに続く目黒記念も、1番人気・59`を背負って優勝。直線一気の強襲で決めた2戦連続のレコード勝ちだった。一撃必殺の末脚に「白い稲妻」の異名がついたのは、この頃の活躍からである。急速に力をつけたシービークロスは盾獲りの本命とも目されたが、天皇賞直前に脚部不安を発症し、やむなく出走を断念。その後も持病の繋靭帯炎に悩まされ続け、生涯、脇役から這い上がることはできなかった。それでも引退式(同じ松山吉三郎厩舎のモンテプリンスと合同で行ったことでも有名)には多くのファンが詰め掛け、白い勇者との名残を惜しんだ。
 現役時の成績が伸び悩んだせいか“種牡馬”シービークロスの人気は振るわなかったが、一方で潜在能力の高さを評価する生産者の熱意もあって、数少ないファーストクロップからタマモクロスという優れた後継が誕生した。「稲妻2世」もまた晩成タイプだったが、史上初の天皇賞春秋制覇を成し遂げ、昭和最後の年度代表馬に輝いている。その武器は風か光と見紛うような、父譲りの凄まじい末脚であった。
 
   
 
シービークロス
牡 芦毛 昭和50年5月5日生
調教師 松山吉三郎 馬主 千明牧場

フオルテイノ
1959 芦
Grey Sovereign Nasrullah
Kong
Ranavalo Relic
Navarra

ズイシヨウ
1968 芦
パーソロン Milesian
Paleo
キムラス タークスリライアンス
ローヤルデイール
 
   
  通算26戦7勝  
 
年月日 レース名 距離 人気 着順 タイム 斤量 騎手
昭52.11. 6 東京 新馬 1400 1 4 1:24.9 53 吉永正人
11.20 東京 新馬 1200 1 2 1:12.2 53 吉永正人
11.27 東京 新馬 1400 1 1 1:26.2 53 吉永正人
12.25 中山 ひいらぎ賞600万下 1600 4 1 1:37.0 53 吉永正人
53. 1.28 東京 オープン 1400 1 5 1:24.9 54 吉永正人
3.12 中山 オープン 1600 3 5 1:38.5 54 吉永正人
4.16 中山 皐月賞 2000 10 5 2:05.0 57 吉永正人
5.28 東京 東京優駿 2400 8 7 2:28.4 57 吉永正人
6.25 中山 日本短波賞 1800 3 4 1:50.1 55 吉永正人
9.10 東京 京王杯オータムH 1800 3 3 1:47.6 54 吉永正人
10. 1 東京 ラジオ関東賞セントライト記念 2400 2 3 2:27.0 56 吉永正人
11. 5 東京 立冬特別700万下 1800 1 1 1:48.7 54 吉永正人
11.19 東京 ダービー卿チャレンジT 1800 1 2 1:49.2 52 吉永正人
12.17 中山 有馬記念 2500 13 10 2:34.6 54 吉永正人
54. 1. 5 東京 日刊スポーツ賞金杯 2000 5 1 2:00.6 55 吉永正人
2.18 中山 目黒記念(春) 2500 4 3 2:36.4 57 吉永正人
3.11 中山 中山記念 1800 4 7 1:50.0 55 吉永正人
4.29 京都 天皇賞(春) 3200 10 3 3:20.5 58 吉永正人
6. 3 阪神 宝塚記念 2200 6 9 2:13.6 55 吉永正人
9.23 東京 毎日王冠 2000 4 1 R1:59.9 56 吉永正人
11. 4 東京 目黒記念(秋) 2500 1 1 R2:32.3 59 吉永正人
55. 4. 6 中山 オープン 1800 5 3 1:52.9 54 國兼正浩
4.29 阪神 天皇賞(春) 3200 1 4 3:19.0 58 吉永正人
10.25 東京 オープン 1800 3 4 1:54.9 57 吉永正人
11.23 東京 天皇賞(秋) 3200 7 11 3:32.8 58 吉永正人
57. 4.11 中山 オープン 2000 6 1 2:03.0 53 篠原茂
 
  ※レース名は当時の表記による  
  2006.1.5 レーシングプログラム掲載