昭和18年(1943年) 阪神優駿牝馬(オークス)優勝馬
 史上最強牝馬 クリフジ
   
     
 
 男勝りの活躍で名を馳せた牝馬は何頭もいるが、クリフジほどの実績を築き上げる名牝はもう二度と現れないだろう。11戦11勝という最多全勝記録は、中央競馬においていまだに破られていない。その内訳はさらに素晴らしく、東京優駿(日本ダービー)、京都農商省賞典四歳呼馬(菊花賞)、そして阪神優駿牝馬(オークス)の"三冠"を制した。彼女が樹立した金字塔は時代背景の違いを超えて、永遠の輝きを誇っている。
 昭和15年3月、千葉県の下総御料牧場で生まれたクリフジは2年後のせり市に上場され、4万円という高値で落札された。ダービーの1着本賞金(当時は1万円だった)の4倍にもあたる大枚をはたいて購入した馬主・栗林友二氏の目に狂いはなく、彼女は翌年5月、東京で迎えた初陣を皮切りに怒涛の連勝街道を突き進んでいった。
 デビュー3戦目、牡馬を相手に1番人気の支持を集めたダービーでは、スタートで大きく出遅れながらも6馬身差の圧勝で無傷の戴冠を果たした。秋を迎えると破竹の勢いにはますます拍車がかかり、戦前は秋に阪神で行われていたオークスを10馬身差で楽勝。さらに3戦後の菊花賞では後続を大差にちぎり捨てて、悠々とゴールを駆け抜けている。競走馬の頭数自体が少なかった時代のこととはいえ、ダービーでレコードを記録しているようにその絶対能力は突出していた。デビュー前に風邪をひいて初陣が5月にずれこんでなければ、制した"三冠"に桜花賞、皐月賞を加え、すなわち当時のクラシックを総なめにしていた可能性はかなり高い。
 刻々と悪化していく戦局のもとで馬券の発売をともなう開催が停止され、競馬が「能力検定競走」として行われるようになった昭和19年もクリフジは3つのレースを走り、とうとうただの一度も他馬に先着を許さずターフを去った。年藤と名を改めて繁殖入りしてからは桜花賞、オークスの二冠に輝いたヤマイチを送り出して、天に恵まれた能力の大きさを再度証明した彼女。顕彰馬にも選出された"史上最強牝馬"の蹄跡は、現役時代の雄姿を知らない後世の人々をも圧倒し続けている。
   
     
 
クリフジ
牝 栗毛 昭和15年3月12日生
調教師 尾形藤吉 馬主 栗林友二氏
顕彰馬

トウルヌソル
1922 鹿
Gainsborough Bayardo
Rosedrop
Soliste Prince William
Sees

賢藤
1926 栗
チヤペルブラムプトン Beppo
Mesquite
種光 ラシカツター
第二アストニシメント
   
     
  通算 11戦11勝    
 
年月日 レース名 距離 人気 着順 タイム 斤量 騎手
昭18.5.16 東京 新呼馬 1800 1 1 1:58.0 52 前田長吉
5.30 東京 四歳呼馬 1600 1 1 1:42.4 53 前田長吉
6.6 東京 東京優駿 2400 1 1 R2:31.8 55.5 前田長吉
9.25 阪神 古呼馬 2400 1 1 2:34.8 57 前田長吉
10.3 阪神 阪神優駿牝馬 2400 1 1 2:34.0 57 前田長吉
10.23 京都 古呼馬 2000 1 1 2:07.0 63 前田長吉
10.31 京都 古呼馬 2600 1 1 2:53.2 62.5 前田長吉
11.14 京都 京都農商省賞典四歳呼馬 3000 1 1 3:19.6 55.5 前田長吉
19.4.23 東京 呼馬駈歩五歳第二級(能力検定競走) 1600 1 1:48.4 60 前田長吉
4.30 東京 呼馬駈歩五歳第一級(能力検定競走) 2000 1 2:17.4 58.5 前田長吉
5.7 東京 横浜記念(能力検定競走) 2400 1 R2:39.8 58.5 前田長吉
   
 
レース名は当時の表記による。また昭和34年(1959年)9月4日までの競走タイムは、
1/5秒単位で記録されていたものをすべて1/10秒単位に換算(1/5秒単位を2倍)して表示した。
   
  2005.5.21 レーシングプログラム掲載