今でこそ、美浦トレセンでも坂路調教は当たり前のように行われているが、ひと昔前は、坂路といえば栗東トレセンにしかない「名物」以外の何ものでもなかった。そして栗毛の快速馬・ミホノブルボンこそは、そのような時代の「坂路の申し子」だった。
 栗東に坂路ができた当初からこれをフルに活用することで知られた戸山為夫調教師(故人)の方針によって、これ以上はないというぐらいのハードトレーニングを課せられ、心肺機能と四肢の筋力を極限まで鍛え上げられた馬。それが、ミホノブルボンなのである。
 だからこそ彼は、「距離の不安」説を吹き飛ばし、皐月賞、ダービーを見事に逃げ切って、二冠をものにすることができた。三冠のかかった菊花賞では惜しくも0秒2差の2着だったが、血統的にステイヤーとは言いがたい馬が残した実績としては、申し分のないものだった。
 闘病中の身でありながら、いつでも坂路のスタンドに陣取って愛馬を見守る戸山調教師と、筆者も当時立ち話をさせてもらったことがある。その折、信念の強さに感銘を受けたものだ。坂路で鍛えてどこまで馬が強くなるか、自身の方法論が言わば「実験段階」にあることを、師は公言してはばからなかった。その言葉には、馬がハードな調教に耐えられずに潰れてしまうリスクもある、という意味が含まれていた。外野席からは「あのやり方は人間のエゴにすぎない。高馬を預かったら、あんな真似はできない」という野次すら飛んでいることを、十分すぎるほどに理解していた。ミホノブルボンが購買価格の決して高くない馬であることも事実だった。それらすべてを承知の上で馬を鍛え、結果を出した戸山師は、自らの信念に賭け、その賭けに勝ったのだ。
 菊花賞のあとのミホノブルボンは故障に泣かされ(リスクが現実のものになったのかもしれなかった)、再びレースに復帰することなく引退した。その間に戸山調教師も亡くなって、厩舎は解散した。しかし、いや、だからこそ、というべきだろうか。戸山為夫さんという、ひとりの優秀なホースマンの置き土産としてのミホノブルボンは、今も、この世に残されたわれわれの心の中を疾駆しつづけているのである。

  (渡瀬夏彦)

 SPECIAL MOVIE

H3 朝日杯3歳S
H4 皐月賞
H4 日本ダービー
H4 菊花賞

ミホノブルボン
牡馬 栗毛

平成元年4月25日生まれ
馬主 (有)ミホノインターナショナル
マグニテュード
1975 鹿毛
Mill Reef
1968 鹿毛
Altesse Royale
1968 栗毛
カツミエコー
1983 青毛
シャレー
1976 青鹿毛
ハイフレーム
1968 栗毛

全成績 通算 8戦7勝
  年月日 レース名 距 離 着順 騎 手 タイム 調教師
01 1991.09.07 中 京 3歳新馬 新馬 1000 1 小島 貞博 R58.1 戸山 為夫
02 1991.11.23 東 京 3歳500万下 500 1600 1 小島 貞博 1.35.1 戸山 為夫
03 1991.12.08 中 山 朝日杯3歳S GI 1600 1 小島 貞博 1.34.5 戸山 為夫
04 1992.03.29 中 山 スプリングS GII 1800 1 小島 貞博 1.50.1 戸山 為夫
05 1992.04.19 中 山 皐月賞 GI 2000 1 小島 貞博 2.01.4 戸山 為夫
06 1992.05.31 東 京 東京優駿 GI 2400 1 小島 貞博 2.27.8 戸山 為夫
07 1992.10.18 京 都 京都新聞杯 GII 2200 1 小島 貞博 R2.12.0 戸山 為夫
08 1992.11.08 京 都 菊花賞 GI 3000 2 小島 貞博 3.05.2 戸山 為夫

(年齢は旧表記)






ミホノブルボン号 栄光の軌跡


01 サクラローレル
02 シンザン
03 リユウフオーレル
04 タケホープ
05 コレヒデ
06 エルコンドルパサー
07 オートキツ
08 タケシバオー
09 ハイセイコー
10 サクラスターオー
11 メイズイ
12 マヤノトップガン
13 オンスロート
14 コダマ
15 メジロラモーヌ
16 トウショウボーイ
17 ハクチカラ
18 イナリワン
19 カブラヤオー
20 グランドマーチス
21 エアグルーヴ
22 ミスターシービー
23 ホマレボシ
24 ミホノブルボン
25 ウイルデイール
26 テイエムオペラオー
27 マルゼンスキー
28 セイユウ
29 ダイナガリバー
30 オンワードゼア
31 ホウヨウボーイ
32 メジロマックイーン
33 グリーングラス
34 ジャングルポケット
35 シンボリルドルフ
36 アサカオー
37 ヒカリデユール
38 セントライト
39 ビワハヤヒデ
40 タイキシャトル
41 ハクリヨウ
42 トウメイ
43 ナリタブライアン
44 タマモクロス
45 カネミノブ
46 スピードシンボリ
47 オグリキャップ
48 トウカイテイオー
49 キタノカチドキ
50 メイヂヒカリ
51 イシノヒカル
52 テンポイント
 
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